【経営者/使用者目線】傷病手当金の実務と流れ、注意点

労働者目線での、傷病手当金についての記事はたくさんあるのですが、雇う側目線の記事はほとんど見かけないため、今回はこれをテーマにしたいと思います。
全業種対象ですが、主に協会けんぽに加入している中小事業主向けの解説記事になります。

傷病手当金の内容と意義

そもそも傷病手当金って何?という方はぜひこちらのページをごらんください。
協会けんぽ 病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)
協会けんぽ公式のページですが、簡潔にまとまっています。

ごく簡単に言うと、私傷病で休みになった労働者に、健康保険の方から標準報酬をベースとした給料平均のおおよそ3分の2を支給することで、療養中の生活を支える制度です。医師が労務不能と認める限り、最大で通算1年6か月支給されます。

主な関連制度としては、業務上で休みになった場合の労災補償、原則初診から1年6か月経過後に申請するので傷病手当金の支給終了後に選択肢に上がりやすい障害年金があります。

申請までの流れ/何をすればいい?


スタッフから休み希望の相談があってから、支給するまでの一連の流れを簡単にまとめたのが上記画像になります。
(緑がスタッフが行う分、残りは事業主側で行う分)
傷病手当金の申請書は事業主側/労働者側どちらが提出しても良いのですが、事業主側で書類作成と提出を行う場合が多いです。
スタッフ側で申請してもらう場合は医師の意見書の原本をもらわず、逆に事業主記入分を渡して下さい。

書類を送ってから実際に本人に振り込まれるまでの日数は、協会けんぽの場合、受理から10営業日程度がおおよその目安となります(2023年の様式変更により、スピードが大分あがりました)
協会けんぽ以外ですとこうも早くはない(従来通り、長いと2月程度かかる場合も)のでご注意ください。

その他論点や注意する点

・待機3日間はとにかく休んでいれば良い

傷病手当金が支給される前に、連続する3日間の待機期間が必要です。欠勤、土日祝の休み、シフト外の休みの日なんでも良いので3日連続で出勤しなければこの要件を満たします。もちろん年休/有給でも構いませんので、有給の病気休暇等がないのであれば年休扱いにするのが一番スタッフからするとありがたいでしょう。4日目からは傷病手当金が支給されます。

・自社の規則や制度について再確認しておく

トラブル回避のため、本人が必要以上に不利にならないよう確認し把握しておきましょう。
任意で賃金の出る病気休職制度を設けていて、その支給額が傷病手当金の支給額を下回る場合は併給することができます。
(上回る額がわずかでも1日分としてカウントされるので、あえて賃金の出る休職期間は申請しない手もあります)
上記該当する場合はスタッフ側にそれぞれの金額を試算して説明した上で、選んでもらうのがベストでしょう。

また、出産手当金や育児休業給付金が重なる場合は、それぞれ別個の制度で傷病手当金の通算期間とは別になるので、こちらから優先して受給した方が金銭的には労働者有利ではあります。ただ、事業主としては不利になる場合があるのでここらへんをどうするかあらかじめ整理しておきましょう。

・社会保険料に注意

欠勤中や休職中も、社会保険料は引き続きかかりますので、本人負担分にご注意ください。
従前は傷病手当金の代理受領ができたので、事業主側に振り込まれた傷病手当金から天引きした後に残りを本人振込、ということができていたのですが、2023年1月の改正からは原則としてできなくなりました。
本人負担分をいつ振り込んでもらうかは、あらかじめ本人と確認しておきましょう。

・傷病手当金への協力は義務?事業主記入分すら書かないのは完全に悪手

事業主側が傷病手当金の申請を代わりにしてくれないどころか、事業主記入分すらなかなか交付しないケースは時々あります。
いら立っての行動であることは理解できますが、事業主記入分の交付は健康保険法施行規則にも定められた義務です。
雇い主としていくら思うところがあっても、雇われる側の権利を無視して義務を履行しないのでは、そこに正義はありません。
傷病手当金を支給されても事業主側の負担がより増えるわけではないのですから、さらなるトラブルに発展する前に、せめて事業主記入分の交付だけはしましょう。

【宣伝】弊所の傷病手当金代行サービス

弊所では、事業主側と労働者側双方に対しての傷病手当金代行サービスをスポットでお受けしております。

上記フロー中にある、給与締め日以降でお客様に何をしていただくかといえば、出勤状況や賃金支払い状況の分かるもの(賃金台帳や出勤簿等)と、スタッフ側からもらった医師の意見書(初回のみ健康保険証番号と振込先情報もいただきます)を送っていただく。以上です!

医師の意見書の確認はもちろん、委任いただけるならスタッフ本人とのやりとりも必要な範囲でします。申請書がまとまりましたら、弊所側で提出の代行をします。提出前に確認用+保管用としてpdfをお送りしますので、ご確認ください。
内容に問題なければ提出し、完了となります。

休職時の面談や、傷病手当金の説明でも専門家が必要でしたらぜひお問い合わせください。
上記代行サービスと合わせてのご利用でしたら、最低限の料金にて同席いたします。
サービス料金については、「料金表」ページ最下部のスポット業務欄をご確認ください。

まとめ

傷病手当金について解説させていただきましたが、いかがだったでしょうか?
深堀りするとさらに論点はあるのですが、長くなるため割愛させていただいた分もあります。

この場合はどうなの?といった疑問がありましたら労使関わらず大歓迎ですので、ぜひお問合せください。

ご連絡、お待ちしております!

クレイド法務事務所 代表
前田 健