話題の助成金!キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース、労働時間延長メニュー)

2023年10月20日から、年収の壁・支援強化パッケージの目玉であるキャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)の手続き受付が始まりました。こちらの助成金ですが、人を雇う多くの事業者が対象で、該当した場合に社労士に委託すれば少しの手間で30万円から委託料を引いた金額を得られます。クリニックはもちろん、その他すべての事業所にとって有益になりうる助成金なのでぜひご覧ください。以下、順次説明いたします。

年収の壁・支援強化パッケージとは?

厚生労働省のページより(https://www.mhlw.go.jp/stf/taiou_001_00002.html)
上のリーフレットに沿って説明していきますので、合わせてご覧ください。

年収の壁・支援強化パッケージとは、かねてより問題視されてきた、「社会保険への強制加入」「配偶者の扶養から外れる」ことを避けるための働き控えを減らすために国が打ち出したパッケージです。2つある柱のうち、今回は「106万円の壁」対応としての助成金について説明させていただきます。

なお、「106万円の壁」という表現を上記リーフレットでは使っていますが、実際は「社会保険強制加入の壁」とお捉え下さい。
(「106万円の壁」の存在しない従業員数100人以下の事業主も今回助成金の対象です)

キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)について

「106万円の壁」対応として設けられた上記の助成金ですが、キャリアアップ助成金の7つめのコースとして新設されました。(その他のコースについては下記記事でも触れておりますので、ぜひご覧ください。)

【2023年度版】経営に使える助成金紹介!キャリアアップ助成金/人材開発支援助成金

前回の記事では、助成金とは何かについて解説しました。今回の記事では、実際にどのような助成金があるのかについて簡単に、わかりやすさ重視で解説します。 詳細に解説し…

そんな7つめの新コース、社会保険適用時処遇改善コースはさらに2つのメニューに分かれているので、順次説明します。

(1)手当等支給メニュー

簡単に内容を説明すると、2023年10月以降に新たに社会保険に加入する人に「社会保険適用促進手当」として社会保険料の自己負担相当額(健康保険と厚生年金合わせておおよそ15%前後)を支給することで、実質社会保険料負担の肩代わりをする事業主に支給される助成金です。

私の所感ですが、こちらのメニューはあまり魅力的ではありません。
理由は、単純に支給額が割に合わないからです。

例えばこのメニューを利用したパートのAさん(時間給のみ、その他手当なし)が、前年まで扶養範囲内の年収130万円に抑えていたのを、今年から160万円に増やすことにして社会保険に加入したとします。その場合新たに発生する金額は、「社会保険適用促進手当」としての約24万円と、社会保険料の会社負担分約24万円です。(それぞれ160万円×15%)
言い換えるなら、本来労使で折半するはずの保険料を、事業主が全額負担するということです。

3年で合計50万円が支給されるというと聞こえはいいですが、上記例だと1年目ですでに48万円の出費が発生しています。これでは全く割に合いません。

また、「社会保険適用促進手当」については年数を定めた時限措置(例えば本助成金に合わせ3年)でも良いとしていますが、そうすると従業員側にメリットが薄くなります。「1度勤務を増やしたらそう簡単に減らせないし、4年目以降には高い保険料を支払わされることになるかもしれない」と考えるのは自然なことです。

(2)労働時間延長メニュー

こちらのメニューはおすすめ!今後該当する職員が現れた時のためにぜひ覚えておいてください。

内容としては、2023年10月以降に所定労働時間の延長することで新たに社会保険を適用させる場合に適用になります。
延長幅が4時間未満の場合は賃金(時給であれば1時間当たりの基本給)を5%~15%増やさないといけないので魅力的ではありませんが、4時間以上であれば賃金の増額は必要ありません。

上記の(1)手当等支給メニューと違い、新たに手当が発生することはないので、就業規則改正の必要もありません。
さらに支給金額は1人あたり30万円一括払いで、人数制限もなしと魅力的な条件です。

6月以上雇用しているスタッフを、何らかの理由で4時間以上延長させたいということになり、それにより社会保険に加入させることになった場合は、本助成金をからめることで30万円が支給されます。

さらに、社労士に依頼いただくことで手間も大幅に減ります。
おおよそ、支給まで以下のような流れとなります。(青字は、弊所に依頼いただけると代行する部分)

1.支給要件に適合しているかの確認
2.キャリアアップ計画書の作成と提出
 表紙に労働者代表の署名と、労働者からの意見聴取方法(掲示板やメール、朝礼等で聴取)の記載
3.キャリアアップ計画の実施(労働時間延長と社会保険加入以外することなし)
(労働時間延長と社会保険加入から6月経過後)
4.必要書類の用意
 ・労働時間延長前後の雇用契約書または労働条件通知書等(写)
 ・賃金台帳(写)、出勤簿またはタイムカード
 ・その他必要書類の作成
5.キャリアアップ支給申請書を作成し、必要書類と合わせて提出

いかがでしょうか?していただく作業に特別面倒なものはなく、比較的スムーズに申請できますので、おすすめです!

なお、本来はキャリアアップ計画の実施前にあらかじめキャリアアップ計画書を提出する必要があるのですが、今回は特例として2024年1月31日までなら実施中の提出でも良いこととされています。10月以降に対象者がいる場合はぜひご検討ください。

まとめ

キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)について説明させていただきましたが、いかがだったでしょうか。

特に労働時間延長メニューは大変おすすめです。弊所としてもこういういい方はなんですが「おいしい」助成金と考えています。

本記事が少しでもお役立ちいただけたのなら幸いです。

クレイド法務事務所 代表
前田 健